07
たちは一度跡部の部屋に戻り怪我の手当てをすることにした。
二階に上がると信じられないほど静での恐怖心を煽った。
「跡部たち帰ってきてっかな?」
「どうやろな。」
跡部の部屋に近づくが、誰かがいる気配は感じられない。
がピタリと歩みを止めた。どうしたのかと鳳がを見ると顔色が真っ青だ。
「おねぇちゃんどうしたの?」
「・・・ダメ、です。」
「え?」
「何してんだお前等?さっさと行くぞ。」
「いや、でも先輩が。」
「ダメです。・・・そっちは、行っちゃダメ・・・」
は何かに脅えるようにグッとこぶしを握り締めていった。
「戻りましょう、そっちには行っちゃダメな気がするんです。」
「でも、跡部たちが、」
「ダメと言ったらダメなの!!」
急に声を荒げたに3人(夢ちゃんを含め)は驚いた。
すると、そのの声に答えるように跡部の部屋の中から地を這うような低い声が聞こえてきた。
その声を聞いた瞬間、今までにないほどの恐怖がつま先から髪の毛の先まで一気に駆け抜けた。
「逃げて!!」
それがヤバイものなのは本能的にわかる。きっとここにいるどんな霊よりも強力で恐ろしいだろう。
捕まれば、殺される。
「うげっ」
「ホラ走れ!」
「そんなこと言ったってぇ〜手ぐらい貸してくれたっていいのに。」
転んだは急いで起き上がって忍足たちを追おうとして体が動かないことに気付いた。
気付かない3人にぐんぐん離されていく。声もうまく出せない。
次の瞬間には空気がグニャりと歪み、久しぶりのあの感覚がを襲った。
(赤マントの時の感覚・・・じゃぁまた誰かの記憶を見るんだ!)
今度は事の一部始終を誰かの目から見ているのではなく、
まるで神にでもなったかのようにそこにはいない何かとして見ていた。
それは多分夢ちゃんや、夢ちゃんの家族がまだ生きていた時のものだ。
団らんとしている食卓。幸せそうに笑いあう家族。
食事が終わったのか夢ちゃんと、まだ過ちを犯していないであろう兄が席を立ち手を繋いでどこかへ向う。
向った先はどうやら倉庫で、たくさんのものであふれかえっている。
そこの一番奥まで来た二人は大きなシートをかぶり、暗くなった中に懐中電灯で明かりをともした。
そうすると二人で笑いあって、隠してあった宝石箱を棚の下の隙間から引っ張り出した。
夢ちゃんは宝石箱を空けると、その中からロケットを引っ張り出した。
やけにそのロケットが鮮明に輝いて見えて、兄の霊が誰にも見つからないように隠しているものがコレだとすぐにわかった。
空気が歪み、意識が元の場所に戻ってきた。
「倉庫・・・ロケット・・・これでここから出られる!」
すぐにでも忍足たちのあとを追ってこのことを知らせようと思っただが、そうも行かなくなった。
さっき感じたあの恐怖をすぐ後ろに感じたからだ。
「お前も、殺してやる」
氷のように冷たい何かが首に絡みついた。
(死ぬんだ・・・まだやりたいこといっぱいあったのに・・・)
「!」
「ガッ!!」
自分を呼ぶ声と、すぐ後ろで苦しむ声とではハッとした。
後ろを振り向くと記憶の中ではあんなに優しく笑っていた兄の霊が右目を抑えてうずくまっていた。
その姿は生前とは似ても似つかない。
(こんなに変わってしまったお兄さんを見て夢ちゃんはどう思ったんだろう・・・)
はすぐに兄の霊と距離を取る。
そしてさっきのシリアスさはどこへ行ったんだと叫びたくなるほど連続でシャッターを切り出した。
「ひょー!たまらん、今日からこのカメラ家宝!!」
「馬鹿ですか先輩。さっさと逃げてください!」
日吉が霊に蹴りを繰り出しながらに叫ぶ。
そんなに痺れを切らせた跡部は樺地にを担ぐよう指示を出した。
「わー、凄いですねぇ〜高さが二倍だ。あとベー君を見下ろしてる〜」
「何のん気なこと言ってやがんだてめーは」
「クソクソ!お前殺されるとこだったんだぞ!?」
「偶然通りかかってよかったC−!」
「本当に、よかった・・・です。」
「先輩達逃げますよ!!」
どうやら兄の霊はまいたようで、忍足たちとも無事合流できたは先ほどのことを全て話した。
ようやくここから出られる兆しが見えて全員が喜んだが、は一人浮かない顔をしていた。
「なに落ち込んでやがんだ、あーん?」
「あ、あとベー君・・・別になんでもないんですけど。」
「それがなんでもないってツラかよ。」
「いつもの可愛い顔が台無しだぜマイハニーってことですか?って、イデッ!」
「んなわけねぇだろうが。お前にはシリアスは似合わねぇって言ってんだよ。」
「・・・つまり、心配してくれているんですか?」
「ハッ!?」
「やだねぇー素直になっちゃいなYO!!コノコノォ」
「いい度胸じゃねぇーの。ひねり潰す!」
「ぎょえぇぇ!!」
(跡部氏に励まされちゃった!!ドッキドキだぜ、まったく。顔だけはいいんだからね)
あともう少しで倉庫というところで幽霊大集合となった。
屋敷中にいた幽霊という幽霊が、たちの邪魔をする。
テニスボールが切れればラケットで応戦し、ラケットがダメなら素手でごり押し。
しかし、幽霊も馬鹿ではない。
数も、そして実体がない分疲労がないから体力も上、ジワジワといたぶって持久戦に持ち込もうとする。
もちろん持久戦になれば不利なのはたちだ。
ここはさっさと倉庫へ向いロケットを見つけてしまいたい。
「なんやねん!さっさと落ちろワレ!俺を誰だと思ってんねや、正義の味方萌えンジャーやぞ!!」
「クソクソ、侑士がキモくて集中できねぇ!」
「俺もうねみーよ。全然寝てないんだもん。」
「全員激ダサだ!俺が攻めに変えてやるよ!」(←ちょっと無理矢理?)
「宍戸さん、俺が付いてますからね!・・・メンドクサイからもう降りてもいいかな・・・」
「長太郎素が出てるぞ・・・とにかくさっさとここを片付けないと先へ進めませんから、先輩達もっと動いてください!下克上!!」(←もっと無理矢理)
「バウッ!ダァッ!!」
「、俺らが隙を作る。その隙にお前は倉庫に行ってロケットを見つけろ!」
「わかりました!夢ちゃん行きましょう。」
「うん。」
「任せたぞ。」
「行ってよし!」
「行くのはお前だろうが・・・」
は遅い来る霊たちの間をぬってやっと倉庫までたどり着いた。興奮で体が震えている。
あの記憶が確かなら奥の棚の下の隙間に宝石箱があるはずだ。
は恐る恐る倉庫に入る。屋敷の中でも一番かび臭くさく埃っぽい。
「ここですな。」
棚の下を探ると箱はすぐに見つかった。蓋に手をかける。
これでここからでられる。
「あり?」
しかし、蓋を開けたソコにはロケットどころかチリ一つ入っていなかった。
落胆の色を隠せないは口を開けたまま呆然としている。
「夢ちゃん・・・ないです・・・」
「なんでないんだろう・・・」
「それは俺が持っているからだよ。」
はバッと顔をあげて小さな悲鳴を上げた。
「おにぃちゃん・・・」
そこにいたのは薄笑いを浮かべた兄の霊、そしてその手には紛れもないあのロケットが握られている。
「あなたが持ってたんですね・・・」
「当たり前じゃないか。こんな大事なものその辺に置いておけるわけがないからね。」
「大事なもの・・・それにはあなたを倒す力はあるんですか?」
「さぁ、どうだろうね?自分で調べてみれば?」
「!?」
兄の霊はにロケットを放ってよこした。
「なんで?」
「だって、気になるんでしょ?」
は兄の霊の動きに気を配りながらロケットを調べる。
しかし、どう見ても普通のロケットで、中には幸せそうに笑う家族の写真が入っているだけだ。
間違っても、これにそんな力があるとは思えない。
のその考えを見透かすように兄の霊が口を開く。
「それはただのロケットだよ。それ以上でもそれ以下でもない。
妹と遊んでいた時に見つけて、二人の宝物にしたんだ。」
「・・・じゃぁ・・・本当にそれだけなんですか・・・」
夢ちゃんをみるとと同じように困惑した表情を見せていた。
これで希望は断たれた・・・
「ハハ。残念だったね?まぁここに来たのが運のつきだと思って観念しなよ。」
兄の霊の目が人殺しのソレになり、は息を呑んだ。
しかし立ちはだかるように夢ちゃんが兄の前に出た。
「おにいちゃんもう止めようよぉ!おかぁさんと、おとぉさんと皆でまた一緒に仲良くしたいよぉ!!」
しかし、兄の眼は冷たかった。
「夢、そこをどきなさい。」
「やだ!!」
「夢」
「・・・」
「どけぇ!!」
兄の霊は夢ちゃんをふっとばすとに襲い掛かった。
「うっ」
の首を力一杯締め上げる。
「何もかも許せないんだよぉ!!俺の全てをぶち壊しやがって!!」
「辛かったんですよね・・・一方的な期待という圧力をかけられて、この人はソレに押しつぶされちゃったんだ・・・」
「黙れ!知った風な口を利くな!」
「・・・安心して・・・私は、あなたを諭そうなんて・・・お、思って・・・ません・・・ただ、ただ許せないだけです・・・
あなたのエゴのために・・・どれほどの血が流れ、どれほどの人が・・・苦しみ、悲しんだと思ってるんですか!」
「うるさい!お前等全員ここで死ぬんだ!殺してやるんだ!」
だんだんと意識が薄れていく中、やけに兄の声がはっきりと聞こえる。
(殺す・・・?皆を?・・・そんなことは、私が・・・させない!!)
「・・・させま・・・せん・・・絶対・・・私の友達には・・・て、を・・・出させません!!私が守るんです!!」
は兄の霊をガッシリと両手で捕まえた。
すると、の握った手から眩い光が放たれ、兄の霊の体が消え始めた。
「な、なんだ!?体が消える!?なぜだ!?」
驚きのあまりの首から手が離される。
「ゴホゴホッ・・・居るべき、ところに帰りなさい・・・」
「嫌だ!俺はまだ消えない!全部消してやるまで消えないぃぃぃぃぃぃぃ!!」
それが兄の霊の最後だった。
の意識はそこで途絶え、次に目を覚ますのは埃くさい跡部の部屋のベットの上だった。
あとがき
主人公に霊感的なものが芽生えました!