04
ゆっくりと後ろを振り向いた3人は危うく出かけた悲鳴を飲み込んだ。

なにせそこにいたのは
半透明なか弱そうな女の子。


紛れもなくあの写真に写っていた、昼間に見た女の子。


「今出たら見つかっちゃう。見つかったら・・・おねぇちゃんたち、死んじゃうよ。」
「・・・あれはなんなんですか・・・そしてあなたも」

「アレは私のおかぁさん。幽霊なの。昔殺されて、成仏できなくて彷徨ってるんだ。

そして私も。」

その時タイミングよく窓の外で雷が落ちた。
まるでこれから起こる戦いの火蓋を切って落とすように。









「アカン、寝付けんわ」

忍足は部屋の中を行ったり来たりしていた。
時刻は深夜の1時を回っているというのに、昼間の向日たちの話を聞いて妙に引っかかるものを感じて目が冴えて寝付けない。

「跡部、起きとるかな・・・?」

忍足は自分の部屋を出て、なんとなく隣にある跡部の部屋を訪れることにした。
もし跡部が寝ていたらそれまでだ。

コンコン
「俺や、忍足や。もう寝たか?」

暫くすると、高そうなガウンに身を包んだ跡部が不機嫌そうな顔で現れた。

「何時だと思ってんだ、アーン?」
「えぇやん、起きてんねんから。お邪魔するで。」
「おい!誰が許可を出したんだコラ」
「それより紫のガウンはアカンやろ。趣味悪すぎや」
「そのめがねかち割るぞ?」
「ダメや!これなかったら世界の平和を守る戦士に変身できなくなる!」

肩を抱く忍足の乙女ポーズに戦意喪失した跡部はとりあえずその辺はスルーすることにした。
それを特に気にする風でもない忍足は、ズカズカと部屋に侵入しドレッサーの前にある椅子に腰を下ろした。

「何しにきやがったんだ?」
「いや、な、昼間のアレ。どう思っとんのかなとおもって」
「アーン?あんなのただの見間違いだろ?それともお前、恐いのか?」
「恐いとはちゃうねん。ただ、妙に引っかかるというか。」

「同じモン見るなんて・・・おかしいやろ?」








「信じらんねぇーぜ・・・」
「ガイドさんに聞いた話と同じだC−」

「むふふ、なんと興味深い話でしょうか。これぞ私が追い求めてきたものです!」

たちは女の子から詳しく話を聞いて驚きを隠せなかった。
なぜなら、女の子から聞く話とバスガイドさんから聞いた話がまったく同じものだったからだ。
唯一違うところといえば、謎の死を遂げた原因は兄に殺され成仏できない家族の霊の恨み、つまり霊たちが一家を次々と殺していたということだ。

そして今も、この屋敷の中には成仏できない家族の霊がいる。

女の子は家族の霊に怯えながらも、その危険をこの屋敷に踏み入った者たちに伝えてきたのだという。


「私、皆を止めたい・・・お父さんと、お母さんと、お兄ちゃんと、皆と天国へ逝きたいの! だけど・・・私の力はとても弱いから・・・こうやっておねぇちゃんたちに教えることぐらいしか出来ないけど・・・」

そういう女の子の顔は苦痛に歪んでいた。

はそんな女の子のを見て胸の前でこぶしを握り締めた。

(この子にとって、コレは普通の子がお母さんとお料理したいとか、お父さんとキャッチボールをしたいとかそういうのと同じ思いなんだ・・・)

「わかりました。私達が何とかしましょう!」
「え?」
「ちょ、なにいってんだよ!?」
「だってほおってはおけません。こんな悲しいことないじゃないですか・・・
それに、素敵な写真が取れるかもしれませんし!!」

「「そっちが目的か」」

「大丈夫ですよ。私達が何とかします。そういえば名前をまだ教えていませんでしたね?私はです。こっちのおかっぱが萌えるのが向日岳人くん。がっくんでいいです。そしてこっちの眠りの国の王子様が芥川滋郎君。ジロちゃんでいいです。」

そういっては女の子の前に手を差し出した。
はじめは戸惑っていた女の子もおずおずと手を握り返してくれた。

「私は夢だよ。」

握った感覚はなかったものの、の手にはまだ夢ちゃんが生きていた頃にはあったであろう体温をちゃんと感じることが出来た気がした。


「う、う、うぅ・・・うぅ・・・」

4人の和みムードは不気味な唸り声によって打ち消された。
忘れかけていたが、夢ちゃんのお母さんの霊がすぐそばまで迫ってきていたのだ。

「大丈夫だよ、お母さんはお兄ちゃんに目を潰されているの。物音を立てなければ気付かないよ。」

、芥川、向日は互いの口に手を当てて恐怖をこらえた。
アノでさえ壁を一枚隔てた向こう側から伝わってくる禍々しい空気に震えている。

(これは赤マントの時みたいにいかないな・・・うぅ、凄いピリピリした空気だ・・・)

「うぅ・・・どこだ・・・どこにいるぅ・・・私のかわいいぼうや・・・」

「お兄ちゃんを探してるのよ。おびき出して殺そうとしてる。他の皆もそうなんだ・・・」

夢ちゃんがそっと耳打ちした。

息を殺して、ついでに目を瞑って母親の霊が通り過ぎるのを待つ。

母親の霊の唸り声が聞こえなくなった頃、芥川が口を開いた。

「幽霊になってまで殺しあおうとするなんて、おかしすぎるよ。」
「はい、だから私達が頑張らなくてはならないのです!安心してください、ジロちゃん私のこの知識と、技を持ってすれば不可能はないのです!」
ちゃん、たくまC−や!」

「さぁ、これからどうするかですね!!」

しかし、そんなの言葉を遮ったのは、熟睡していると思っていた跡部と忍足の悲鳴だった。









「幽霊なんてこの世にはいねぇー。」
「せやけどなぁー、」
「俺は自分の眼で見たものしか信じない主義だ。」

たちが必死で霊をやり過ごそうとしている頃、跡部と忍足はこんな会話を繰り広げていた。
跡部ははなから幽霊など信じてはいない。一方の忍足はどっち付かずといったところだろうか。

「俺も超常現象とか信じるほうやないねんけど、感じひんかた?ここに入った時、や〜な感じしたやろ?」
「こういうところは大体みんなそうだよ。まぁ、お前は屋敷になんて普段入らないだろうから、わかんないだろうけどな。」
「嫌味なやっちゃなぁ。」
「本当のことだろう?・・・何だ・・・?」

跡部が口の端をあげて意地の悪い笑みを浮かべたときだった。
部屋にある照明という照明が、突然チカチカと光りだした。

「・・・そういや、寒ない、ここ」

流石の跡部もおかしな空気を察して落ち着かない様子だ。

そしてついに音を立てながら完全に照明が落ちた。

「・・・確かホールにランプが、」
「シッ、聞こえるか・・・」
「?」

忍足の言葉を遮った跡部は、廊下側に耳を済ませた。忍足もそのまねをする。

「・・・うぅ゛・・・ううぅ゛・・・」

確かに聞こえた。判断を仰ぐように跡部に目を向けた忍足は、跡部の顔が青ざめていることに気付いた。

「なんや跡部・・・ビビッとるんか?」
「・・・ハッ!笑わせんなよ。おまえこそ膝が笑ってるぜ?」
「お互い様や」

ゆっくりと近づいてくる足音から遠ざかるように、二人は入り口から離れカーテンで隠された窓に背中を付けた。

どうか部屋の前を素通りしてくれますように。

とにかく呼吸すらしないようにと勤めた。きっと物音を立てなければやり過ごせると。

しかし、現実はそう甘くはなかった。忍足の肘がドレッサーの椅子にかけてあった跡部のジャージに引っかかり、落としてしまった。
幸い、かすかな音が出ただけで、ドアを一枚隔てた廊下には聞こえない。と、安心した二人は更なる恐怖に襲われることとなる。
ちょうど二人がいる部屋の前まで来ていた唸り声がピタリとやんだのだ。
暫の静寂が訪れる。

そして次の瞬間身も凍るような恐ろしい唸り声が聞こえたかと思うと、勢いよくドアが開き、恐ろしいモノが現れた。


「見ィ付けた・・・」


三日月のように割れた赤い口、本来なら両目があるはずのところには目玉の代わりに真っ暗な闇。髪の毛は半分以上なくなっている血だらけ女。

「死ねぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」

女が襲い掛かってきた。
あまりの恐怖に、脳から伝わる信号に体が付いていかない。しかし反射的に悲鳴だけは口から滑り出た。

(・・・俺ここで死ぬんかな・・・)


全てはスローモーションのようにすぎた。
忍足のポケットに入っていたお手製のお札が熱を発し、体を支配していた恐怖から解放された。
忍足はそのお札をあわてて出し、女に向ってかざした。
すると女は、お札を見たとたん苦しみだし、逃げていった。

「・・・たっ、助かった・・・」
「・・・なんだったんだ、アレは・・・」

跡部と忍足は力なく力なくその場に座り込んだ。

そこへ息を切らしたと向日と芥川が駆けつけるのは2分後のことだ。






あとがき

お袋登場!!