02
たちはその後いくつかの心霊スポットを観光したあと、宿となる洋館に到着した。
ここが、ガイドさんが言っていたあのいわく付きの洋館だ。
洋館を取り巻く空気は誰が見ても異常で、重たい。
生きる希望を吸い取られるような、そんな空気。
この洋館は誰をも歓迎してはいない。
ツアー客が宿泊する宿はいくつかあるようだが、・氷帝テニス部は抽選の後ここに決まった。
それに喜んでいるはだけで、他のメンバーは皆嫌そうな顔をしている。
「それでは明日の10時にお迎えに上がりますので、どうぞそれまで恐怖の一晩をごゆるりとお過ごしくださいませ。」
鳳はガイドさんから、古びた鍵を受け取り先に歩き出していたたちの後を追った。
「?」
は視線を感じて読んでいた「日本の都市伝説100」という本から顔を上げた。
門から玄関までの距離が恐ろしく長かったので、暇つぶしに歩きながら読んでいたのだ。
「ちゃん、どーかしたのー?」
覚醒した芥川が、視線の主をキョロキョロと探すに声を掛けた。
「うーん・・・」
視線の持ち主と思われる者の姿は見受けられない。
それどころか、ここは生きているモノの気配がまったく感じられない廃れた洋館だ。
玄関が目の前まで迫っていた。
「宍戸くん!!私が可愛いのはわかりますけどあんまり見つめないでください。
セクハラで訴えますよ?それとも罰としてケツでも揉まれときますか?のぉ?」
「はぁ・・・それじゃ逆セクハラじゃねぇーか。お前激ダサ。」
とりあえず、宍戸のせいにしておけば問題ないだろうと納得したは、「日本の都市伝説100」をリュックにしまうことにした。
洋館に足を踏み入れるには、あと数十歩と迫っていた。
大きな扉を開けるとそこは別世界だった。
一歩踏み出しただけで、外との温度差で体が震えた。
玄関ホールで見渡す限り、全ての窓はカーテンで顔を隠し、その隙間から差し込む光が幾重も足元を照らしている。
カビのにおいが鼻をつく。地面に接する靴裏を少し動かしただけで、砂埃が舞い上がるほど、床には数ミリの厚さで埃のじゅうたんが敷かれている。
天井はクモの巣だらけだ。
「ありえねぇ」
跡部の口から出かかった言葉は、が構えたカメラのシャッター音にさえぎられた。
「電気はないんですかね?」
「これじゃ暗くて何も見えないな・・・」
「電気・・・つけます・・・」
樺地によって電気がつけられた。
「・・明かりがあっても十分不気味やな・・・」
天井から下がるシャンデリアに明かりはともされたものの、
それから発せられるのはレトロなオレンジ色。
ホールの隅、陰になっているところなどにはその明かりは届かず、変わらず闇が居座る。
まるでそこが異世界へ繋がっているのではないだろうか、
魔物が息を潜めて自分達を襲う機会を窺っているのではないだろうか、
そんな錯覚に陥りそうになる。
明暗がよりはっきりしたことによって不気味さが増したように見える。
しかし、誰もが不安を感じているなか、例によって例のごとく、この人だけはわけの分からないテンションで突っ走るのだ。
「うひゃぁ〜、こりゃたまらん!!もう、私今日は興奮して眠れないかもしれないです!!
あれ、何皆さんそんなくらい顔してどーしたんです?さぁ、荷物を置いて探検しに行きましょう!!」
たちは、ホールのすぐ右手にあった客間と思われる部屋に荷物を下ろし、2チームに別れ屋敷内を探索することにした。
散策チームの振り分けは公平にじゃんけんで決めた。
・日吉・跡部・宍戸チームで二階を。忍足・向日・鳳・芥川・樺地チームで一階を担当することになった。
各チームごと、無駄に準備のいいから懐中電灯を渡されそれぞれ出発した。
忍足チーム
「なんや、一階で電気付くの、ホールだけかいな・・・」
「クソクソ、完全に電球切れてんじゃねぇーかよ。」
「ツアー会社の人も、電球ぐらい変えてくれてもいいような気がしますけど・・・
これも雰囲気作りの一つなんですかね?」
一階を一通りまわると、大抵の部屋の電気がつかないことが判明した。
一つ一つの部屋にお風呂は付いておらず、大浴場が男女共に一つずつあった。
一番奥には大きな食堂と、その食堂と間仕切りをとれば繋がるようになっているホールがあった。
「おれそろそろお腹すいちゃったC〜。」
「・・・そろそろ、戻りましょう・・・・」
「せやな、跡部たちも戻ってる頃やろ?」
お腹がペコペコの芥川はその言葉を聞くと、喜んで走り出した。
「ジロー先輩、テニスしてるときよりもキラキラしてません?」
「待てよジロー!!おれも腹へってんだっつーの!!」
それを追って向日も走り出す。
『ぎゃ!!』
向日と芥川の姿が角を曲がって見えなくなってすぐ二人の声が上がった。
「どうしたんですか!?」
忍足たちが駆けつけると、そこには腰を抜かしかけた向日と、呆然と立ち尽くす芥川がいた。
駆けつけた3人に状況を説明しようとする向日だが、口がパクパクとするだけで何を言っているのか分からない。
「がっくん落ちつきぃ。何があったんや?にセクハラでもされたんか?」
「お、女の子だよ!!」
「女の子がいたんだぜ!?そこに。」
「んで、目があったらすーって消えちゃった!!」
その頃のチーム
「むむむ、怪しい!!このしみ、きっと血痕に違い有りませんっ」
「んなわけあるかよ。」
「リョータン、夢がない。」
「うるせーよ。そして、その呼び方止めろよ!!」
「フン」
「あ?日吉今鼻で笑ったろ?」
「変な言いがかりはよしてください。
でも、その呼び方似合ってますよ。」
「んだと!?」
「リョータン私のピヨシを虐めないで!!」
「うるせぇ」
「誰が先輩のものなんですか?誰が」
「っせーな!!ちょっと黙ってろよ!!」
たち4人はたくさんある部屋を一つずつ見て回っていた。
以外の3人は寝床の確認さえ取れればいいと思っていたのだが、いちいちがあの部屋はどーだの、これはあーだのとウロチョロするので、必然的に全ての部屋を見る羽目になるからだ。
「日吉君日吉君、ちょっと写真とってください?私、この絵の前に立ってるんで。」
「先輩は撮りすぎです。」
「いーじゃないですか減るもんじゃない!!」
「迷惑なんですよ。まったく・・・」
「えー、もしかしたら幽霊さんとのツーショットが撮れるかもしれないのに。
日吉君の幽霊に対する情熱はその程度だったというのですか?見損ないました!!」
「一生見損なっていてください」
「やん、ピヨシ君は放置プレイがお好みなんですな!」
「はいはい、撮るからさっさとしてください。」
「わたし日吉君のその冷たさがたまらんです。」
あきれきった日吉は適当に2,3枚写真を撮りカメラをに投げるように返した。
「布団は多少埃を被っているようだが、・・・うだうだ文句を言ってもしょーがねぇな。」
「このさい寝れればいいだろ。」
「部屋数も相当あるようですし、一人一部屋は余裕ですね。」
「わー私恐いから、リョータン一緒にねようねー?ピヨシ君でもいいですけど、あとべー様は寝相悪そうだからやだ。」
その言葉に宍戸は全身に鳥肌を立てて後ずさり、日吉は古武術の構えをとった。
跡部だけは眉間に青筋を浮かべている。
「ぶざけるなよ、誰の寝相が悪いだとあーん?」
「あとべー君がですよ。耳かすつまってるんじゃないですか?しょうがないですね、私が膝枕で耳掃除し・て・あ・げ・る!」
「殺すぞテメェ、ナニを根拠に、」
「昔近所に住んでた泣きぼくろの子が凄く寝相悪かったんです、だから。」
「貴様・・・お前の部屋は一階だ。二階は俺らが使う。」
「二階にきたらぶっ飛ばすからな。」
はチッと舌打ちをして、なにやらブツブツといい始めた。どうやら、今夜2階を使うメンバーの部屋へどうやって忍び込むかという計画を立てているようだ。
「おら、そろそろ戻るぞ。」
は背を向けた跡部に向って舌を出し反抗の態度をとった。
「まったく、コレだから俺様はっ!!」
視線だ!!
バッとは後ろを振り返った。目を凝らすと、廊下を支配する闇の中に確かに、人影が見えた。
身長は大きくない。女の子だろうか。
しかし、その人影は次の瞬間には消えていた。
「見間違い・・・?」
いや、確かに何かがいた。それに、今のは屋敷に入る前に感じたあの視線に間違いない。
は鼓動が早くなったのを感じた。この屋敷には自分達以外の何かがいる・・・
あとがき
主人公・がっくん・ジロちゃんが目撃したのは物語のキーマン!!