01
はこの上ない興奮を覚えた。
なぜなら、今日からたちが泊まる屋敷にそんな因縁が存在するということを、口裂け女に扮したガイドさんから聞いたからだ。
今、は大型バスの一番前の席に座っている。
そこから見えるのは、道路の左右に生い茂る木の葉が太陽の光をさえぎり、昼なのに暗くなった山道。
先ほどから1時間も走っている。
何故がこのバスの中に一人で座って、ガイドさんの話を熱心に聞いているかというと、それはひとえにコレがミステリーツアーだからと言い切っていいだろう。
って、ゆうかそれしか考えられない。
自称「立海男子テニス部マネ」のは、「赤マント事件」いらい、特に何もせずダラダラとレギュラー陣をヤラシイ目で見続ける毎日を過ごした。
レギュラー陣も基本的ににマネの仕事を期待していないから特に部活に支障が出ることはない。
ただ、たまらん真田は未だにのヤラシイ視線になれないのでしょっちゅう怒鳴り散らしているが。
そんなは愛読のミステリーマニア向けの雑誌を読んでいるとき偶然にもこのツアーを発見してしまった。
テニス部の面々は、これで休みの日までに押しかけられて写真とか撮られなくてすむと喜んでいた(近頃のの趣味は写真撮影)。
即、参加を決意したはなんだか一生の別れを惜しむかのような別れをつげて、今にいたるわけだ。
赤也のもう一生帰ってくるな、っていう声はに聞こえていない。
で、コンナにウキウキしているわけだが、もう一つ原因がある。
それはの後ろから、二人がけ用の座席を5つも占領してがやがややっているとっても美形な男子集団だ。
5つ目の座席には偉そうな泣きほくろを目の下にくっつけた不機嫌丸出しの美形が座っている。
(是非ともコレはお知り合いにならなくてわ・・・グヘへ)
今日の日程をガイドさんから聞き終わった後、は行動を開始した。
音も立てずに座席の上で回れ右をすると、後ろの座席を覗くように、ソローッと目から上だけを背もたれの上に出した。
そして、目が合っちゃいました。V字おかっぱのめんこい男の子と。
はにやけが止まらず、すぐに顔を引っ込めた。
(ぶんちゃんに負けておりませんなぁ。お隣のエロめがねイケメンも素晴らしい!!)
後ろの席ではおかっぱ君が隣のエロめがねに耳打ちした。
「なぁ侑士、今ぜってぇー前の奴俺たちのこと見てたよな?」
「そーか?俺本読んでたしわからんけど。」
「クソクソ侑士、なんで見てネェーんだよ!!」
はにやけが収まったのを合図にまた目から上を出した。
今度はばっちりおかっぱ君と、エロめがねの両方と目が合った。
「萌えぇ〜」
「・・・な、言っただろ!?」
「ほんまやな・・・なんか用かいなお嬢さん?」
はお嬢さんという言葉に小さく反応した。
実は、幼い容姿がコンプレックスなのだ。大人っぽく生まれたかったんだって。
はバッと座席の上に立ち上がったり、抗議した。
それにより、バス内の注目はに集まり、目立ちたがりののテンションは上がった。
「お嬢さんとは失礼ですね。わたし、見た目通りの中学三年生なのですよ。
したがってもう、お嬢さんという歳ではないので撤回してください!!
わたし、自分ではお姉さんだと思ってるんですっ!!って、言うことで是非お近づきになりたい!!」
その後は周りの迷惑も考えず、エロめがねの後ろの座席の補助席を出し、そこへ陣取った。
隣には爽やかそうなのになぜか幸村と同じオーラを放つ銀髪の長身の男の子と、庶民的な香のする短髪の男の子が座ってる。
まずは自己紹介から入る。のポリシーは「自己紹介で第一印象は大切に」だが、もうすでに第一印象はボロボロなので、この場合、「もっと印象をボロボロにするための自己紹介」だ。
「うひひ、私の名前はと申しまして、11月6日生まれの蠍座なのです。
何度も言いますが、中学3年生です!!彼氏は随時募集中ですから、なんなら君私を彼女にしてみる?
ヘイヘイ??」
のノリに顔を引きつらせた長身君は、いびつな笑みを浮かべて返答する。
「あ、あぁ・・・自分は鳳長太郎といいます・・・2年なので後輩ですね。よろしくお願いします・・・」
そして、隣でドン引きしている短髪に「先輩も自己紹介してくださいっ!!」と、肘打ちした。
「・・・おれは宍戸亮だ・・・同じ学年だ・・・」
「うひょー、後輩君と、同い年君ですか!ねぇねぇ君は君は!?」
次には忍足、向日、樺地、日吉、芥川(寝てるので樺地に聞いた)の順に自己紹介させた。
「私のことは好きに呼んでください。とか、ちゃんとか、先輩とか、さんとか、なんなら
は・に・いって呼んでもよろしくてよ?」
そして、はついに王の怒りに触れてしまう。
「で、で、そこの泣きぼくろの綺麗な方は??是非お名前をお教えください、ハハァー」
ブチン
バスのなかの者は、全員跡部のが切れる音を聞いただろう。
上機嫌で「津軽海峡冬景色」を歌うの頭にはでかいたんこぶが出来ている。
言わずもがな、きれた跡部の制裁である。
大音量でバスの中を揺るがす歌声に、忍足は跡部の方に傾きながら話しかけた。
(席替え済み)
「いいかげん、機嫌直し?鳳だってわざと間違えたわけやないやん。」
「すいません、跡部部長。」
忍足の声を聞いた鳳は、前の座席から顔だけを出し跡部に謝った。
「馬鹿野郎。そんなことはもうどうでもいい。はやく、アイツをどうにかしろ。」
実は跡部たち氷帝テニス部レギュラー陣は好きでこのミステリーツアーに参加したわけではない。
もともと鳳の「皆で旅行にでも行きたいですね?」という言葉が元凶だった。
その言葉に賛成した向日がどうせならと、行き先の分からないミステリーツアーに参加したいと言い出し、
即決定。
はじめから乗り気ではなかった跡部を、無理矢理引っ張ってきたのだが、どうやら申し込んだツアーは怪奇現象とかの方のミステリーだったらしい。
その上、と来たもんだ。
「激ダサだな跡部。コレも何かの縁だぜ?大人しくしとけよ」
「うるせー、おれはお前等みたいに単純に出来てネェーんだ。」
「クソクソ跡部!!ひでーぞ!!」
「あーん?」
跡部と向日の間で散る火花をさえぎるように、ガイドさんの声が響いた。
いつの間にかはいびきをかいていた。
あとがき
主人公には明かされていない100の技があります。
「すぐ寝る」はその一つです。