「遊ぼうよ」









蒸し暑い午前。立海テニス部は部活に精を出していた。しかしそんな中、切原赤也と丸井ぶん太だけは遅刻の罰としてテニスコートを離れ校庭を走らされている。

「あーたりー」
「それは俺の台詞ッス。先輩のせいで遅刻したんだから、うだうだ言わないでくださいよ。」
「なーにーずいぶん言うようになったな」

「ほんとですよまったく。悪い子ですね。おしりぺんぺんしちゃうゾ」

「「ゲッ!」」

聞こえた二人のものではない声に目を向けると、そこには平走するの姿。

「お前いつの間に・・・」
「まじびびった〜」
「うふふそんなに喜ばれるときたかいがあります」
「そりゃ良かったな」

最近ようやっとの扱い方を掴んできた二人は、以前のようにつよく追い払うことはしない。何故ならこうやって軽いあしらったほうがめんどくさいことにならないことを学習したからだ。

「あ、そーいやあの噂知ってるか、アレ、アノ・・・」
「ついにボケました?一番にボケんのは真田ふくぶちょだと思ってたのに」
「あー!いーけないんだいけないんだ!真田君にいってやろ!」
「いいッスよ。その代わりこの間真田副部長とジャッカル先輩の使用済みタオルぱくったことばらしますからね。」
「違いますよ〜!馬鹿也君以外の皆のタオルです〜」
「何自慢気に言ってんだよ。そっちの方がやべーだろィ」
「そのやべーって、やべー嬉しいの方ですか?やだなぁ〜変態さんなんだから。なんなら今度はパンツを頂戴してあげてもいいですよ!」
「・・・先輩と喋るとホント疲れるッス」
「なんか照れる」

ゲンナリして走るペースの落ちた二人にすかさず真田の喝が入る。テニスをしつつも、しっかりと二人の行動に目を光らせている辺り、流石幸村の不在中このテニス部をまとめ上げてきただけある。

「で、話戻っていいか?」
「いいっすよ」
「しょうがないから聞いてやりますよ。ホレホレ喋りたまえ。」
「何様だよ?・・・まぁいいや。今から話すことはあくまで噂だから責任は持てねぇーけど、駅前にパン屋あんだろィ。そこ右に曲がってちょっと行ったところにほっせー道あんじゃん。」
「あー、昼間でも暗いとこッスよね。俺よく家に帰るとき近道だし使いますよ。」
「そこ、・・・出るらしいぜ」

「うひょー!!!!もっと詳しく教えたまえよぉ!!」

「だー!!わかったから引っ付いてくんなよ!赤也助けろ!」
「はーなーれーろー!!」

そこへまたも真田の怒声が響く。

「お前真田の拳骨くらいてぇーのかよ・・・」
「ソフトなSMならいけますっ!」
「出るってなにがっすか!?」
「え、ちょっと赤也君無視?最近冷たくない?そんなんなら浮気しちゃいますよ!」
「出るって言っても、声だけらしいんだけどさ」
「ブンちゃんまで!?話ふってきたくせして・・・いいですいいです。続けてください!」
「言われなくても続けるけど。で!その声ってのが

「遊ぼうよ」

って言ってくるらしいぜ。」


「ほう、遅刻してきたうえにサボリとはいい度胸だ。」


話の一番盛り上がるところ。いつの間にかランニングの足も止まり、顔を寄せ合うようにしていた三人に影が落ちる。しかも低く唸るような声には怒りか満ちているのがわかる。

ぎくりとした3人がゆっくりと振り向けば、そこには幽霊よりも恐い恐い真田が鬼の形相をして仁王立ちしていた。

「そこへ直れぇぇぇぇぇ!!!!!」





「あーマジいてぇー!ふくぶちょったら手加減ねーんだから!」

あれから部活終了時刻までこっぴどく叱られた切原は、真田の制裁を受けた頭を摩りながら帰路に着いていた。もう少し歩けば丸井が言っていた「出る」と噂の小道に入る。

「でも、ありがちだよなー。どう考えたって作り話っしょ!」

しかし、その小道に差し掛かると自然に切原の足は止まってしまった。つくり話とは思っていても、実際に一度幽霊の存在を知ってしまっていると、頭とは裏腹に体はしりごみしてしまう。

「・・・もしかして・・・俺恐がってんの?・・・笑えねぇー」

「ははぁーん。やっぱりお子ちゃまですねー赤也君は」
「そーなんでちゅー僕おこちゃまなんでちゅー・・・って何言わせてんすか!?大体なんで先輩がいんの!?」
「わたしがどこにいようと勝手じゃないですか。てか赤也君キモイです。引くわー」
「先輩に引かれるとかって終わってる〜」
「どういう意味!?褒めてるんですか?ありがとう。」
「あ、あぁ・・・」

顔を赤らめて握手を求めてきたに、半分あきれつつも手を差し出すとナデナデされたので一応殴っておいて、例の小道に向き直る。

「先輩どうせ、丸井先輩が言ってたことホントかどうか見にきたんでしょ?」
「はい。是非このカメラに収めたいと!!」

そういったはリュックから、中学生のお小遣いでは到底手が出なさそうなデジタル一眼レフカメラを取り出してシャッターを切る仕草をした。

「・・・どうでもいいけど、あんま興奮して近所迷惑にならないようにだけ気をつけてくださいね。」
「はーい!」
「大丈夫かな・・・?」



一歩小道に足を踏み入れるとじめっとした空気が体にまとわり付き、まだ昼間だと言うのに薄暗い。確かに「出そう」ではある。

「なんか意識すると、不気味なとこッスね・・・」
「うん、ウキウキしますね!!うひょー」
「あっそ・・・」

二人は並んでドンドン小道を進んでいく。は意味もなくパシャパシャとシャッターを切って「そういえばこの間真田君の生着替え写真を撮ったんですけど、いくらぐらいで売れると思います?」とか言ってる。

と!その時。
一瞬にして背中に冷たいものが走ったかと思うと、微かに、小さな声が聞こえてきた。

「あ、赤也君・・・コレは・・・」
「不味いんじゃないですか・・・?」

二人は一瞬顔を見合わせてすぐに走り出した。

「しゃ、写真を撮らなくてはっ!!」
「んな事言ってないでさっさと走ってください!!」
「えぇ〜」
「ジャッカル先輩のフルチン写真!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

あと10mで小道を抜ける。目の前がだんだん明るくなってきた。

「うへぇ〜・・・・」
「あとちょっとッスよ!」

スピードが急激に落ちたの手を赤也が引くのと、

『あ そ ぼ う よ』

不気味な声が耳元で聞こえて、の髪の毛を何かが掠めたのは同時だった。が慌てて後ろを振り向くと、暗闇に青白い子供の手が戻っていく。

「あ、危なかった・・・」



次の日。立海のテニス部部室でと赤也は丸井に昨日の出来事を話していた。

「で!あーで、こーで、こうだったんですよ!!」
「まじおっかなくてちびるとこだったっす!!」

身振り手振りを交えて懸命に話す二人だったか次の瞬間に信じがたい言葉を耳にすることになる。

「はぁ?んなわけねーだろィ。だって昨日の全部作り話だぜ。」

「「なにぃぃぃぃぃぃ!?」」

「いやいやいやいや!だって見ましたよ私!この間、真田君の乳首立ってたのと同じくらい目に焼きついてますから!!うひょー!!!」
「今回は先輩の狂言なんかじゃないッス!ちゃんと俺も見たんだから」

「お前等夢でも見てたんじゃねーの?止めた方がいいぜ?歩きながら寝るのは。じゃ!」

そういって部室から出て行った丸井の姿を、いつまでも見続けている二人なのでした。
一体アレはなんだったんでしょうね。










あとがき


凄い久しぶりの更新こんなに長いのに、こんな内容でごめんなさい。
なんか残念なことになっちゃった・・・ 2008/08/05