朝練が終わって教室へ向おうとした私は
ニヤニヤした忍足先輩に呼び止められた。
なにたくらんでんでしょうねこの人は・・・
貸し借りは計画的にの巻
教室に戻った私はなだれの起きそうな自分のロッカーから、国語辞典を発掘しようと奮闘していた。
後ろではまゆちゃがさっさと見つけろと無言の圧力をかけてくる。
だってしょうがないんだよこれ、すんげーモノいっぱい入ってるからさ。
しかも入ってるものの半分はテニス部の持ち物だから。
「なんであんたのロッカーにタオルが大量にはいってんのよ?」
「今の駄洒落?タオルが、大量に・・・ってぇごめんなさい!すみません!ちょっと調子に乗りました!」
「くだらないこと言ってないで聞かれたことにだけ答えればいいのよ。」
「・・・跡部先輩が持ってろって・・・部室に置いておくと洗濯したばっかりなのに汚されちゃうから。向日先輩とかに。」
「アノ人たちほんとに3年?」
「あたしそれいつも思ってるよ。・・っと、あったあった。」
「やっと見つけた?」
一番奥に埋まっていた辞書をやっと引っ張り出してため息がでた。
「今日国語ないのになんで出さなきゃなんないんだろう・・・」
そう私、今日は国語のない日なんだ。
なのになんでこうやって発掘現場と化したロッカーからわざわざ辞書を引っ張り出したかといえば、
変態という逆境を跳ね返し、寧ろそれを強みにしちゃってる忍足先輩のせいなわけで。
「なぁちゃん。悪いねんけど国語辞書貸してくれへんかな?」
「え・・・なぜ私に?ほかの先輩とかに頼めばいいじゃないですか。」
「ちゃんのがええんや。」
「そんなこといって、どうせ断られただけなんじゃないんですか?」
「ガビーン!鋭いわ自分。」
おいこいつ今口で言ったよガビーンって。しかも死語じゃん。
やっぱ年齢詐称してんじゃないのか!?
「ってことで、よろしゅうな。後で取りに行くわ。」
「ちょ、まだいいなんて!おい、こらエセ関西人!!」
朝呼び止められた私は先輩とこんな会話をしてました。
ほんと意味わかんない人ばっかだな。迷惑!!
「なんであたしが貸さなきゃなんないのかな?」
「気に入られてるからに決まってるじゃない。馬鹿?」
「いや馬鹿って酷いよね。」
「まぁ、あんたが気に入られてることでこっちは儲かってるし。助かってるわよ。」
そういってまゆちゃんは私が死ぬ気で隠し撮りしてきたテニス部レギュラー陣の写真を広げる。
まったく感謝の念が感じられないと思うのは私だけじゃないはずよね。金の亡者だねコノ子。
「あたしが気に入られてるなんてありえない。マジありえない。ていうかありえない。最悪キモイ」
「ウザイから黙ってよ。しらねぇよそんなん。」
「だって・・・あんなのあたしのことからかって遊んでるだけだもん。玩具だよ私は。もー」
「そこだけ聞くとあんた恋する乙女みたいよ?」
「ハッ、冗談はよして。相手は人類最強の変態たちだよ?私は普通の恋愛がしたいんです。」
「まぁ夢を語るのは自由だからね。」
完全に意識が写真の品定めに集中したまゆちゃんを見てたらなんか目が潤んできちゃったぜ。
あたしの青春はどこ行ったんでしょう?
そこそこかっこいい男の子とお付き合いして、普通に生活したかったなわたし・・・
そんなことを考えていると急に廊下が騒がしくなった。
なんだろう、喧嘩?
私の考えを察したように呆れ顔のまゆちゃんが言った。
「馬鹿じゃない?忍足先輩が来たんでしょうが。」
「ゲッ!?」
「はぁ、うまくやってよね。写真撮るんだから。」
そういえば取りに来るって行ってたかもしれない・・・
やだなぁ。これじゃファンクラブの人の嫉妬を買っちゃう。
頭いたいぃぃぃぃぃ
すぐに頭痛の原因が顔を出した。年齢詐称の老け顔に笑顔を作って、低音ボイスで私を呼ぶ。
「これでよかったですか?」
「おおきに。」
やったよまゆちゃん!!これで一仕事終わった!
しかし、私の解釈ミスでなければ目の前の忍足先輩は帰ろうとする様子がない。
受け取った辞書を左手に持ったまま、満面の笑みで私を見てる。
気まずい・・・これは非常に気まずい。流れる沈黙にだんだんと辺りが騒がしくなってくる。
「あ、あの〜まだなにか?」
「用がなかったらいたらあかんの?」
当たり前だろう変態。さっさと帰れ
「いや、だって・・・」
「俺、出来れば帰りたないわ。」
そういった瞬間忍足先輩は私の手をギュッと握り、
「俺、ちゃんのその美脚ずーっとみていたいんやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
全校に響き渡る大声で信じられない変態発言をした忍足先輩を、とっさに私は右ストレートでオトしていた。
くわばらくわばら
昼休みの屋上で、左ほほにでっかい絆創膏を貼った忍足先輩を前に謝り倒す私。
それを見て腹を抱えて笑う先輩達。
アノ日吉先輩ですら笑わすなんて、意外にお笑いのセンスがあったりするんじゃないだろうか。私。
「本当にすみませんでした!なんていうかアレは条件反射というか、なんというか・・・とにかく無意識で!
すみません!!」
「・・・」
「うぅ・・・お願いします許してください。なんでもしますので・・・すみません!!」
「おい忍足。あんまを虐めんなよ。」
私と目を合わせようとしない忍足先輩にそういってくれたのは氷帝の良心宍戸先輩。
あんた天使やぁ
それに比べて他の先輩達ときたら・・・
馬鹿にするように鼻で笑う跡部先輩
ただ笑ってる向日先輩
寝てる芥川先輩
微笑む滝先輩
宍戸先輩を見て微笑む鳳先輩
笑いをこらえる日吉先輩
無表情だけど、明らかにオーラが楽しそうな樺地(樺地先輩は癒しだからOK)
皆楽しむだけ楽しんで、私を助けてはくれないんだ。
まったく、奴等に宍戸先輩の優しさを5%ぐらいずつでいいから分けてやりたいよ!
そんで皆宍戸先輩みたいになればいいんだ!
でも、「俺さまの美技に酔いな」っていう宍戸先輩を想像してちょっと鳥肌が立ったけどね。
「ちゃんほんまに謝る気あるん?」
「え!?それは、はいもちろん!!」
完全に意識の飛んでた私を忍足先輩が少し凄みを利かせた声で覚醒させた。
ちょっと恐いんですけど・・・
チキンの私にはちょっときつい。
「せやなぁ。なんでもしてくれるんやったら、ゆるしてやってもええで。」
「本当ですか!?よ、よかった・・・」
しかし、安堵したのもつかの間。
「なら足に頬ずりさs「セクハラで訴えますよ?」なんでもするってゆうたやん!」
「先輩は限度というものを知らないんですか?大体思わず殴っちゃったのだって、正当防衛ですよ!」
「跡部さん聞きました?この子開き治ったで。考えられへんわ。」
「知らねぇーよ。俺にフルな馬鹿タリ」
「ヒドッ!ええもんええもん。俺にはガックンが付いてるし、いざとなったら皆だって・・・
あの、その全員で気持ち悪いものを見る目で見るのやめてくれへんかな。素で傷つくんやけど。」
「お前も大変なのぶん殴っちまったな。同情するぜ。」
「忍足だったら、まだ跡部の方がマシだC−ホクロの辺りが」
「俺はホクロしか忍足に勝てねぇっていいてぇのかあーん?」
「ハハハ、宍戸さんと比べたら全てにおいて勝てませんけどね。相手が忍足先輩でよかったですよ。」
「てめっ、誰に向っt「え、跡部先輩以外誰かいます?」・・・い、いい天気じゃねぇか今日は」
跡部先輩を鳳先輩が打ち負かした!?
ちょ、隣で日吉先輩が下克上に燃え始めてるんですけど・・・髪の毛がスー○―サイヤ人になってる!
「おっ、日吉燃えてんな!」
「今の先輩達なんて余裕で追い抜きますよ。」
「クソクソ日吉言ったな!やれるもんならやってミソ!」
「喧嘩は、いけ、ません・・・」
え、なんかあっちでもこっちでも火花が散ってるんだけど・・・
やべぇよ。これもう完全に皆戦闘モードだよ。
ここにいたら多分流れ弾に当たって私死ぬ。
死ぬ!!
私は迷わず「逃げる」を選択する。忍足先輩の足元にある自分の辞書を引っつかんでダッシュ。
跡部先輩とかがなんか叫んでたけど気にしない。
だって「男はかまってやるとすぐ勘違いして、図に乗るからほっとけ」って、言ってたからね。
まゆちゃんが
「ハァー・・・」
今あたしの手の中にあるこいつのせいでえらい目にあうところだった。
なんとなくぺらぺらとページをめくって手を止めた。
いや、止めさせられた?
「美脚」というところにばっちり黄色いマーカー。
ちょ、これよく思春期の男子がやるやつじゃん・・・
しかも絶対忍足先輩だよ。自分が犯人だって自白してるのと一緒じゃん。
いや、寧ろこれは突っ込めって言うことなのかな?
「って、まだあるし!!」
下克上とか、羊とか、アクロバットとか、美技とか、黒魔術とか。
なに、これはつまり先輩達皆グルってことなの?集団イジメ?
そのほかにもなんか卑猥な言葉とか色々マークしてあったけど、これから3年間この辞書を使わなきゃらないわけですか?
それより何よりこれ弦兄の辞書なのに!!
「おい、泣いてっぞ。」
「跡部先輩のマークした不細工ってのがいけなかったんじゃないですか?流石にストレートすぎますよ。」
「あーん?本当のこと言って何がわりぃーんだよ。それ言ったら、じろーの顔射のがありえねぇだろうが。」
「うわっ、お前そんな言葉マークしてたのかよ。激ダサだな。」
「宍戸に言われたくねぇーC!ムッツリスケベ」
「ちゃうで、ムッツリは日吉や。いややなぁ〜こうゆうやつが痴漢とかになんねんで?」
「は?馬鹿いわないでください。美脚とか言ってる時点ですでに将来痴漢有望組みじゃないですか。
それとももうすでにしてるとか?」
「ちょ、先輩に向ってそれはないやろ!」
「こんなのが先輩だなんて本当に嘆かわしいです。」
「あー!!そういえば、おれ巨乳とかマークしたかも!」
「貧乳のの辞書になんてことを!!」
「それは泣きもしますよ・・・謝って来てください。」
「クソクソジロー!がマネ業しなくなったらどうしてくれんだよ!」
「俺ちゃんに謝ってくる!」
「聞こえてるし謝りに来なくていいですからっ!!」
もう絶対何があっても、私物を貸し出さないっ!!
あとがき
あんまり絡みが・・・