あの衝撃の入部から早くも1週間がすぎようとしているわけなのですが・・・
なんだか部活に馴染めてるのか馴染めてないのかよく分からないっていう。
いや、忍足先輩とかは初日からセクハラまがいの発言をしまくっているんだけどね。





フルーツ・バスケットの巻





と、いうそんな状況を察してくれたのかは分からないんだけど、あどべー先輩がレギュラー全員と接する機会を設けてくれた。

残念ながら米粒ほども嬉しくない。

その機会っていうのがアレ、フルーツバスケット。
あとべー先輩って頭悪いんじゃないかな?小学生のお楽しみ会ですか。

中三にもなってまだ小学生のお楽しみ会まだ引きずってるらしいあとべー先輩は、お昼休み私達を部室に集めた。
もちろん拒否権なんてない私は泣く泣く部室に向うわけですが、途中もの凄くご機嫌オーラを放つ日吉先輩を目撃した。
あの日吉先輩がだよ。「下克上だ」とか独り言いってるあの先輩が・・・
しかも確実に部室へ向っている。

ちょっと、フルーツバスケットで浮かれてるんだこの人・・・

是非見なかったことにしておきたい。



「どうも〜・・・」
「おせぇぞ

え、まだ昼休み入って5分しかたってないんですけど・・・
むしろ、5分で部室に来たことを褒めてもらいたい。

私はすでに丸く並べられている椅子の中心に立たされた。
どうやら有無を言わさずわたしが鬼のようだ。

「ときに跡部部長、なぜフルーツバスケットなのでしょうか・・・」
「ばっ、てめぇ、別にやりたかったとかじゃねぇからなっ!!」
「・・・顔が赤いですよ先輩・・・」



と、言うことで始まったフルーツバスケットなのですが、やっぱり私がお題を出さないと始まらないわけで。
問題はどんなお題を出したらいいんだろうかっていうこと。

「え、じゃぁ、テニスやってて楽しいと思う人。で。」

ありきたりだけど、まぁ一回目だから。
もちろん全員が移動を始める。私はすばやく目の前の席、今まで日向先輩が座っていた席へ座る。
鬼は宍戸先輩に決定したみたいだけど。

あれ、どうして服に泥が付くほど激しい争いが出来るんだろうか・・・
中学三年生でしょ?

私はどんなお題を出そうかと悩んでいる宍戸先輩を横目で見ながら隣の鳳先輩に小声で話しかけた。

「なんか皆さんとても楽しそうですね・・・わたし理解に苦しみます。鳳先輩はどう思います・・・」
ちゃん、それはつまり宍戸さんの素晴らしさが理解できないってことなの?」
「ちょ、鳳先輩誰もそんなことは言ってないじゃないですが!」

まぁ、半分以上は理解できないけど、今そんなことを言おうものなら確実に鳳先輩に殺されるだろう。
なんてったって、先輩は今真っ黒なオーラを無差別に放出しているのだから。
わたし側ではない鳳先輩の隣に座っている忍足先輩がソノオーラの被害を受けている。

不憫だ・・・

「宍戸先輩はとても素晴らしい方だと思います・・・特にあの、おでこの傷あたりが・・・」
ちゃんごときが宍戸先輩を語るなんて100億年早いんだけど。」

じゃぁあたしにどうしろってんだよ・・・
とりあえずこのモーホー先輩の扱いには注意しておこうと決めて隣の向日先輩に目を向けた。
今日もV字にカットされた前髪がきまってる。

「先輩達っていつもこうなんでしょうか?」
「おまえなかなか失礼な奴だよな。」

わたしは眉間にしわを寄せてしまった向日先輩に無言で飴を差し出し、それに目をキラキラさせて飛びつく先輩を見て危うく噴水になりそうな鼻を押さえた。

「先輩、なんか幼稚園児みたいですね。」
「ん、なんかいったか?」
「はい、あとベー先輩が向日先輩はまるでケツの青い餓鬼だって言ってました。」

あたし、性格かわったんじゃないだろうか?

ようやく宍戸先輩がお題を出した。
「今日の所持金が500円以下の奴。」

なんと庶民的なっ!
ここはお金持ち学校ですぞ!?流石に所持金500円って・・・

「なんでそんなピンポイントなお題なん?移動すんの俺だけやん!」

いるのかよっ!!

「ばーか、お前を狙ったんだよ!激ダサだな」

そして、知ってたのかよ!!

「この学校で所持金が500円以下なんて侑士ぐらいだもんな」
「貸した金はいつ返ってくんだ?あーん」

文句を言いながらも中央に立った忍足先輩は少し考えた後、ニヤリとヤラシイ笑みを浮かべて私を上から下までジロジロと見た。
その姿は私が思い描く、品定めをする中年の痴漢親父のイメージとビッタリと重なった。

「こんなかで美脚の持ち主ちゅーんはどうや!ほら、立った立った!」

「・・・なぜそんな期待の眼差しで私を見つめるんですか・・・」

明らかに私に向けられる居心地の悪い視線を無視し、出来る限り目を合わせないようにと勤める私は急に生暖かいモノに手を包まれ色気のない悲鳴を上げた。
見ればそれは忍足先輩の手で、私の手はソノ大きな手にガッシリと握られていた。

ちゃん!俺、ちゃんのこと言ってるんやで!!」
「手を握らないでください!!それに私なんかが美脚なわけないじゃないですか!」
「そんな謙遜せんでええねん!細すぎず、太すぎず!かつ、整った形!初めておうたときから思っとったんや!あぁ、あかんスカートから覗く白い足!そそられるわ!」
「ぎゃぁ!!変態っ!!」

忍足先輩の血迷った行動はレギュラーメンバー全員によって止められ、その後のゲーム中は椅子にグルグルまきにされることとなった。

鬼となった私の出したお題はにんじんが苦手な人。
小さい頃からコレがどうしても食べられない。
移動を始めたのは日向先輩と日吉先輩の二人。
私は自分の右側にある日吉先輩の席に腰を下ろすため、すばやく移動した。

つもりだった。

どうやら私と日吉先輩はアン○ールズのコントのようにお見合いをしてしまったらしく、その拍子に私の胸ポケットに入っていたシャーペンが床に落ちた。
軽く謝罪の言葉を述べて落ちたシャーペンを拾おうとした伸ばした私の手は、同じようにシャーペンを拾おうとしてくれた日吉先輩の手と一瞬ほんの少し触れてしまった。
なんてベタな展開。

少女マンガならこのあと甘い恋に落ちるんだろうな・・・ははは、あたしじゃ考えられないや

なんてのん気なことを考えながらふと先輩に目を向けて言葉を失った。
だって!だって!あのクールな先輩の顔が、まるでゆでダコのように見る見ると赤くなっていってるんだよ!!
どうした先輩!私の手が触れちゃったことで悪い菌でも移りましたか!?

「わ、悪い」
「いえ・・・こちらこそ・・・」

赤い顔をしている先輩を見ていると、なんだかこっちまで照れてしまう。

「おら、てめーらなに両思いが発覚してこれからの恋人との素敵な毎日を想像してテレまくってるウぜーカップルみてーなことやってんだよ!あーん」

私の中で新たな「乙女チック日吉先輩」というイメージ像が再構築されようとしている時、あとベー先輩は舌打ちとともにその作業を打ち破った。
どうやら殿はご立腹のようだ。


鬼が日吉先輩に決まって、私は宍戸先輩と芥川先輩の間に腰を下ろした。
静だから芥川先輩は寝てるのかと思ってたけど、ちゃんと参加してたんだ・・・
うん、現にこうして私のことキラキラした目で見てくるもんね。

私は部室裏での一件依頼、先輩に会うときとか、見かけたときには自然に身構えるようになった。
また抱きつかれたら大変だ・・・いや自惚れじゃなくてさ。

「あ、ゆーきちゃん今日もいい匂いする〜」

20周では先輩の頭は冷えなかったのか!!

「近いですっ!!」

芥川先輩が身を乗り出すように私に近づいてきたので、あえなく私は隣の宍戸先輩に助けを求めた。
こんなことを言うと鳳先輩にどやされるから口には出せないけど、実をいうと、宍戸先輩には不良っぽいしとっつきにくいというようなイメージを持っている。
だけど、今はそんなこと言ってる場合じゃない!

「た、助けてください宍戸先輩!」
「ジロー!!」
「ちっ、邪魔すんなよ宍戸のくせに・・・」

あれ、芥川先輩から黒いオーラが・・・

芥川先輩が離れたのを確認して、私は宍戸先輩に頭を下げた。

「助かりました」
「あぁ、大丈夫かよ?」
「はい、おかげさまでなんとか」

そうか、といって二カッと笑う先輩。
なんだ、意外と宍戸先輩って喋りやすいじゃないか。
それにとても爽やかで親近感がある。
テニス部には何でコンナ人がモテルんだろうかって思う人はたくさんいるけど、宍戸先輩がモテルのはわかる気がする。

あれ、今殺気を感じた・・・

そのあと何度か移動を繰り返して、ついに私は跡部先輩の隣の席に座らなければいけないという窮地に陥ってしまった。
うわーやべぇな・・・やだなぁ・・・
という私の気持ちを察したのか、凄く不機嫌な顔を私に向けた。

「なにやってんだ、早く座れよ。それとも俺の隣には座れねぇーってのか。あーん?」
「そんなまさか、滅相もございません。ちょうどあとべー先輩の隣の席に座りたいと思っていたところです。」

ちなみに鬼は忍足先輩で、その目は私の足に・・・
縛られたままの参加なんてとても器用ですね先輩。
そこまでさせる忍足先輩の原動力っていったいなんなんだ・・・

「おい、。お前変な呼びかたすんじゃねぇ」

なんだ急にこの人は・・・
と、跡部先輩に目を向ける。声色とは裏腹に、別に機嫌の悪い顔はしていない。

「呼び方ですか?」
「その、あとべーって伸ばすやつだよ。」

無意識だった。

「そんな呼び方してましたか、わたし・・・」
「ジローに汚染されてんじゃねーよ。」
「すみません、以後気を付けますね。跡部先輩」

すると、そう言った私にあとべー先輩はとっても意地の悪い笑みを浮かべてこういった。


「跡部様だろう、あーん?」





そのあとますます白熱したフルーツバスケットが繰り広げられることとなり、もちろん着いていけなくなった私はどさくさに紛れて部室の隅に避難した。

「あれ、樺地先輩。」

しかしすでにそこには先客がいた。

「先輩も非難してきたんですか?」
「ウス」
「ですよね。・・・ハァ、私なんでこんなことしてるんだろう・・・」

「頑張って・・・ください。・・・何か、あれば・・・自分が、手伝います・・・」

て、て、て、て、天使だ!!
テニス部に天使がいる!!



私樺地先輩にならどこへでもついていけるような気がするわ、お兄ちゃん!
私は無意識のうちに樺地先輩の手を握っていた。



この「交流会 フルーツバスケット」と称されたプチ戦争は、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴るまで続けられた。

教室に帰った私はまゆちゃんの質問攻めにあい、まゆちゃんが密かに始めた「写真サークル」とは名ばかりの、つまりはテニス部の写真を売って金を稼ごうっていうサークルの専属カメラマンに抜擢された。

死ぬ気で写真を撮りまくれってさ。




きっと彼女には自分のせいでマネになって大変だなぁ〜マジでごめんね?

とかそういう気持ちとかは微塵も無いんだろうな〜

っていうのが今日の一番の収穫でした。










あとがき

実は日吉君は乙女チックなんだね☆萌え