ドでかい校門の前。ワイワイと登校する生徒の群れの中にたたずむ私。
私ほんと凄いわ。自画自賛しちゃうけど、ほんと凄いよ。
だってあの時間に起きたのに遅刻じゃないんだもん。セーフだもん。

弦兄にたたき起こされたあとマッハで準備した私は、しっかりと皆に文句を撒き散らし、
小さい頃から培われた強靭な足筋を駆使し遅刻は免れた。
今なら弦兄のあの意地悪に感謝できる気がするよ!!
たまらんありがとう!!




チャームポイントは泣きぼくろの巻






だから上機嫌で歩み出した私は気付かなかった。
女子生徒たちの悲鳴にも似た歓喜の声が上がるのと、その歓喜の声が向けられている人物の通行の妨げになっていることに。

「あーん。てめぇ邪魔なんだよ。」
「ゲッ!?」

振り向くとそこには綺麗な顔の泣きぼくろをくっつけた男が私を見下ろして立っていた。

そいつに対する私の第一印象は最悪。
綺麗な顔をしてるくせに、性格悪そう。出来ればこういうのとは係わり合いになりたくない。

「おい、なんなんだよその顔は。」
「いや、あの・・・そのなんていうか・・・ごめんなさいっ!!」
「あ、おいてめぇ!!」

はっはっはぁ
みろぉ、コレが私の足筋の凄さだ。驚いたか泣きぼくろめ。
私は即座に「逃げる」を選択した。
通行の邪魔をしたことは悪いと思うけど、何もそんなガン飛ばしてこなくたっていいじゃん。

礼儀を知れ。(←あたしが言えない)

でも、あれ誰だったんだろう。あんなえらそうな態度なんだから上級生なんだろうけど。
うぉ〜思い出せそうなのに・・・見たことあるんだあのほくろ。




私は思い出せないもどかしさを抱えたまま教室へ。

1-5組

今日からここが私の教室になる。
いろんな友達が出来るといいな。出来ればまともな人。

私はとりあえず自分の席につき、不安と期待を抱きつつ隣にいた女の子に声を掛けた。


「お、おはよう。私真田って言うんだ。よろしくね?」





「でねでね、その跡部先輩ってねモテモテでさ、」

入学して初めて出来た友達は隣の席の鈴木まゆちゃん。
今私のほうに身を乗り出して、鼻息荒くテニス部にはイケメンが多いんだよっていう、私には全然関係ないような話をしているのがまさしくその子。
底抜けに明るくて、美人で、人徳もあって、友達も多い、ってのが表の顔。
人見知りするわたしが付き合えるんだからとってもいい人ってのは確実なんだけど、
問題は彼女に裏の顔があるってこと。

彼女は魔王属性だ。

ときどき何かを企んでいるような笑い方をする。いや実際に企んでいるんだ。
しかも、そーゆー顔を私を含めた極数人の前でしかしないことがまたたちが悪い。
それから金に目ざとい。根っからの商人根性っていうのかな、そういうのが彼女には備わっている。

「だから、こっそり写真を撮って売るわけよ。がっぽりだわコレ。」

まゆちゃんは何処から取り出したのか電卓をぱちぱち打ってる。

さっきから色々まゆちゃんのこと言っているけど嫌いなわけじゃないよ!!
むしろ、とっても気が合うし、さばさばした性格は嫌いじゃない。
つまり大好きってことなんだけど・・・

「ねーまゆちゃん・・・まゆちゃんってそういう情報とか何処で手に入れてくるの?」
「ダメダメ、企業秘密よ。シークレット!!まぁ、同業者からってことだけは教えてあげるわ。」

口に人差し指を当てて少し子悪魔的な笑みを浮かべるまゆちゃん。
あんた中一だろ。なんだよ同業者って・・・

「すっ、凄いね・・・それにしてもまゆちゃんもそのテニス部のファンなの?」
冗談は止めて。ファンなんて、あたしをあんなミーハーな女共と一緒にしないでよ。」

「男はね、顔じゃないの、金なのよ!!」

まゆちゃん、もう神々しいよあなたは・・・




退屈な授業の終わりと、昼休みとを同時に告げるチャイムが校内に響き渡った。
たちまち校内のいたるところが騒がしくなる。
さすが金持ち学校、チャイムの音すらも高級な感じがする。(←そんなわけない)

は学食?お弁当?」
「あたしお弁当なんだ。まゆちゃんは?」
「あたしもよ。教室じゃなんだし、どこかいい場所探しましょ?」
「うん。」


お昼を取る場所を探しに私達は中庭へやってきた。
お日様はぽかぽかだし、なんだかピクニックみたい。

どこで食べる?なんて話しながら歩いているとまゆちゃんが急に立ち止まった。

「なに、どーしたの!?」

その顔は真剣そのもの。
わたしは生唾を飲んだ。

、わたしの金ズルセンサーが反応してる!!近くに金ズルがいる!!」
「しょーもねぇー・・・イタッ!!叩かないでよまゆちゃん」
「しょーもないなんて失礼よ。世の中金で回ってんの。金を笑う奴は金に泣くんだからね。」
「・・・そこまで言ってないじゃん・・・」

私としてはさっさとお弁当を食べて、午後の日差しを浴びながらつかの間の休息をとりたいところだ。
紅茶なんかあったらなおいい。
だけどどうやらそれは叶わぬ夢らしい。

まゆちゃんはどこからかカメラを取り出し、「行くわよ、これ絶対テニス部だから。」
なんて言ってる。
テニス部の皆さん。わたしあなたたちのことよく知らないけど、同情するよ。
だってまゆちゃんに完全に金のなる木扱いだもんね。

まゆちゃんは軍隊のように腰をかがめ、抜き足差し足でカモの出す電波を追っていく。
わたしもまゆちゃんと同じように歩く。
これ、明らかにあれじゃんね、パパラッチじゃんね。
テニス部はアイドルかって。
実際テニス部は見たことないけど、いっそアイドル部とか、ホスト部に改名しちゃえよ。

、こっち」

どうやらまゆちゃんはカモの電波の出所を割り出したらしい。

「でか、なにこれ!?」
「テニス部の部室よ」

うそこけ
たかが部室ごときがこんなにでかいわけない。
だって部室て普通、こじんまりしてて、汚くて、くさいってのが定番じゃん。
でもここ家じゃん。お前、ホームレス馬鹿にしてんのか?

周りを見渡せば一面テニスコート。確かに、部室の立地には妥当だろうけど・・・

「いいくれぐれも物音立てるんじゃないわよ。」
「まゆちゃーん、これ犯罪じゃないの?」
「ばれなきゃいいのよ、ばれなきゃ」
「そういう問題じゃ・・・いえ、そういう問題ですよね〜!!」
「でしょ。」

一瞬まゆちゃんの後ろに恐ろしいものが見えた気がする・・・
ヘタレの私には到底逆らえない・・・

「ちょっと踏み台になってくれない?」
「ゲェ」
「しょうがないじゃない、窓まで届かないの。」
「・・・・」
「儲けの1%でどう?」

そーゆー問題じゃないよおねぇさん。しかも1%ってケチだね・・・

「・・・今回だけだよ・・・もーわたしはまゆちゃんのパシリじゃないんだからね・・・」
「えぇ!?」
「えぇ、ってなんで!?」





もうちょっと右!!あぁ、行きすぎ!!」
「う゛ぅ゛・・・」

jこんな四つん這いで無様なかっこの私に無茶言わないでください!!
もうわたしの背骨はどうにかなっちゃいそうだぜ、ヘルプミー!!

「ね・・・まゆちゃん・・・ほんとにいるわけ・・・その、テニス部とやらは・・・」
「うん、勢ぞろいよ。ミーティング兼お昼ってとこね。うぅ、やったわ。」
「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛・・・おもい゛・・・」
「もーちょっと、あと5、6枚で終わるから・・・ゲッ!やばっ!!」
「え?」

不意に私の背中が軽くなった。
どうかした?というまゆちゃんへの問いかけに返事はなく、代わりに扉がガチャっと開く音が。

たらりと嫌な汗が流れた。

これ、不味い状況じゃない・・・?





「何してんだてめぇー。」

そして聞き覚えのある声。
わたしはすっかり忘れていたことを思い出した。
朝のあの失礼なほくろはこの氷帝学園生徒会長で、そしてまゆちゃんがなんども口にしていた部員200人を束ねるテニス部部長、つまり、今四つん這いになり無様なかっこの私の後ろから声を掛けているこの男。

跡部景吾であるということを。







グッバイ青春
グッバイ平凡










あとがき

主人公は不憫な子です。