09
は走った。
捕まらないよう、殺されないよう。


「赤マント」は標的を一人に絞った。 体も小さく、一番しとめやすいと直感的に悟ったのだ。何より自分を虐めていたやつらと同じ性別

「死ぬ気で赤マントから逃げるぅ!!」

しかし、いくらの逃げ足が速かろうが、逃げなければならないと脳が信号を送ろうが、 普段の運動不足生活で培ったたるんだ筋肉たちは限界を訴える。 200mも走らないうちにはエンストを起こした。 「赤マント」を確認するため急いで後ろを振り返ったが、しかしそこに「赤マント」の姿はない。

「ふぃ〜どうやら、赤マントもわたしのオリンピック選手並の身体能力にはかなわなかったようですね。 ウシシ」

だから、油断したは気付かなかった。 の背後で包丁を振り上げて笑っている「赤マント」に。

!!」
「ハェ?」

ブンッと包丁が振り下ろされるのと、が自分を呼んだ幸村のほうに体を向けるのは同時だった。 あと一秒でも自分の短時間型ターボエンジンに酔いしれていたら、今頃は真っ二つになっていたところだ。

「ヒョゲェェェェェェ!!おしっこちびるぅ!!」

はゴキブリのように幸村の背に隠れた。

「逃がすかぁ!!」
「諦めた方がいい。日下部裕子。お前は僕達を殺せはしないよ」

そこへ柳が現れた。
手にはがいつしか盗み見てやろうと思っているいつものデータノートと、 もう一冊古ぼけたノートが握られている。 それを発見した「赤マント」は一歩あとず去った。 柳はそのノートを「赤マント」に見せ付けるように前へだした。

「これはお前が生前書き残した日記だな。美術室で見つけたよ」
「君はどうやらこれが苦手らしいね。これがある限りは僕達に手は出せないだろう?」

そんな幸村たちの言葉を聞いた「赤マント」は苦虫を噛み潰したような顔をした後、たちを襲うのを諦めて次の獲物を追うために踵を返して走り去っていた。 いや、返して逃げ出したのだ。

「恐ろしい幽霊ですね・・・でも、何故逃げちゃったんですか?」
「この日記を見たからだよ。」
「?」

「襲ってきた赤マントが俺達が美術室に入ったら追うのを止めたんだ。あれだけ殺そうとしていたのに何故だ? だから俺達は美術室に入ってこないのではなく、入れないのではないかと考えた。美術室自体がそうさせているのか、 もしくは美術室にある何かがそうさせているのかは分からないが。」
「で、美術室の中を探し回ってたらこれが出てきたってわけ。ノートの中を見て一発でアレのだってわかったよ。まぁなんでこれが嫌なのかは分からないけど。」






「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!柳生先輩後ろにいるっスぅぅぅぅ!!」
「静に走りたまえ・・・今逃げ切るよい方法がないか考えてるところですッ!!」
「こ、この赤マントの野朗!あんた今ラピュタ王の前にいんだぞ!跪けェェェェ!!」

「赤マント」に追われてる柳生と赤也は一階の廊下を全力疾走していた。 このまま逃げ続ければ、疲れを知らない幽霊に捕まり殺されてしまう。 かといって、逃げきるいい方法も見つからない。

「どうすれば・・・」

しかしそんな二人に救いの手が伸ばされた。

「こっちだっ!!」

前方、あと20mほど先の階段のところに柳が立っている。

「こっちだ!!ついてきてくれ!!」

どうやら柳は屋上に向っているらしい。

「先輩っ・・・おれらもう走れないっすぅぅ・・・」
「柳君このままでは追いつかれます!!」
「死ぬ気で走れ。さもないと密室ににと閉じ込める!」
「げぇ、赤マントに殺されるうえに、先輩に見取られるなんて・・・ありえないっすっ!!」
「赤マントを倒す方法が見つかった。このままおれ達で屋上へ誘導する。」
「本当ですか!?」
「あぁ、だから頑張ってくれ。」

三人は屋上へ出た。そこには他の全員の姿があった。

「いいかい皆、僕とちゃんの指示に従ってくれ!」

三人に続いて屋上へやってきた「赤マント」を幸村の指示で丸く取り囲む。手にはあの日記が。

「あんまりオイタするとどうなるか思い知らせてやりますからね!」

目に見えて動揺する「赤マント」に鋭い視線でが挑む。

「皆僕に続いて!」

幸村が九字を切り始めた。九字は9個の呪を唱え指で空中に縦4本、横5本の線を簡単な護身のまじないでが教えたものだ。(まぁ彼なら丸腰で悪霊に挑んだとしても勝てそうだけど・・・)それにぎこちなく他のメンバーが続く。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」

すると明らかに「赤マント」が苦しみ出した。口からは荒い息と、憎しみの言葉があふれ出る。

「うぅぅぅぅぅぅぅ!!やめろぉぉぉぉぉ!!!殺してやるぅぅぅぅぅ!!!!」

突然、膝を折って苦しんでいた「赤マント」が髪を振り乱してに襲い掛かった!

「危ねぇ!!」
「ウギャぁブンちゃん素敵ッ!」
「俺天才的だろィ」

咄嗟にを助けたのは丸井だった。まさかの拳骨ぶん殴りで。

「いでぇぇぇ!!」

でもやっぱり素手で殴れば殴った側もいたいわけで、丸井の拳には薄っすらと血がにじんだ。

「ぎゃぁぁぁ!ぶ、ブンちゃんのおててがっ!」

それを見たはぶっ飛んだ「赤マント」に日記を向けて、まさかのダッシュを見せた。

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
(ちゃん)(さん)!!』

体制を立て直した「赤マント」が鋭く光る包丁を構える。それでもは構わず突っ込む。

「いるべき所へ帰りたまえぇぇぇぇぇ!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!憎いィィィィィィ!!!!」

その瞬間、日記が目がくらむほどの光を放った。光は達を優しく包み込み、対して「赤マント」には身を焼き尽くす地獄の業火となる。

「あああああああああああ」

日記に「赤マント」が吸い込まれていく。

「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

それが「赤マント」の最後だった。いつの間にか日記から光は消えていた

「お、終わったんスか・・・?」
「・・・終わったのか・・・」
「・・・そうだね・・・終わったんだ・・・」

立海男子テニス部レギュラー陣+1名は知らぬまに眠りに落ちていた。





あとがき

任務完了!!