06
昨日第5の事件が起きた。
その日は嫌に肌寒い日だった。朝から空は灰色の雲に覆われてまるでその日起こることを予想していたみたいに。
一昨昨日からたち生徒は先生達の講習会のため、午前授業で部活も許されていなかった。 放課後も校舎内に生徒は立ち入り禁止。一日目の調査から一昨日までの2日間の間の調査はおやすみ なにせ昨日は部活が忙しくで調査どころではなかった。
暗くなってからの校舎への立ち入りがなかったことで隙が出来ていたからかもしれない。


「赤マント」が再び生徒達に脅威を振るった。


場所は屋上。時間は7時半頃。襲われたのは夜空を撮りに来ていた写真部の女子生徒。 フェンスがあったのにもかかわらず屋上から落ちた。 いや、落とされた。発見が早かったのと、打ち所が悪くなかったので命に別状はなかったが、まだ目を覚まさない。 そして、たちがそのことを知ったのは緊急集会があったついさっき。 校長先生から、学校が臨時休校になると告げられた。事件が解決するまでだそうだ。 今日は午前授業になるらしい。

はテニス部、もとい臨時立海ミステリー探偵部に緊急集合をかけた。





「これから学校に残って調査をします!!」
「なにをいっているのだ。お前は先生の話を聞いていなかったのか?」

メンバーは口々にぐちを漏らす。 しかし、不興の中でもは凛としていた。

「皆さん、これ以上被害者が出る前に私達で食い止めねば!!」
「しかしな。これがもしあの「赤マント」の仕業だとすれば殺人未遂だ。 おれ達が出る幕ではない。」
「そうだねちゃん。コレはおれ達がどうこうできる問題じゃない。」
「興味本位で首を突っ込んでいい時じゃないじゃろ」
「でも・・・じゃぁ誰がこの事件を解決できるって言うんですか?警察に訴えますか?それで信じてもらえるって思ってます?」
「ならお前なら解決できるっていうのか?」
「・・・だってぇ・・・」
ちゃんそんなに落ち込まないで。怒ってるわけじゃないんだよ。 ただね、僕達には限界があるって事。もう中学生が手を出していいことじゃないんだ。わかるよね?」

幸村は俯くに視線を合わせ、あやすように言い聞かせる。

「いいかいちゃん、もうこの事件に首を突っ込まないって約束して。お願いだ。」

「お願いですか・・・?」

皆君のことが心配なんだよ。渋るに優しい笑顔で語りかけた幸村がそっと小指を差し出す。

暫くすると小さな小指がそれに絡まった。







すでに外は薄暗い。
誰もいない校舎の中に人影が一つ、警備室の前で立ち止まった。 その人影はポケットにはいっていた小物入れから細い針のようなものを取り出し、鍵に差し込んだ。 程なくしてカチャリとドアの鍵がはずれた。 キィィ・・・ その人影はゆっくりと警備室のドアを開け、するりと中に忍び込み電気を付けた。

「ムフフフフ、私が正直にゆうこと聞くと思っているんですかね皆さんは」

人影はちゃんでした。
ちなみに、彼女は天才的なピッキングの腕前を持ちながら、ピッキングが犯罪だと気付いていません。

「昼間のユッキーとの指きりげんまんにはちょっと傾きかけちゃったなぁ。まったく、最近の男性は美人を見るとすぐに口説こうとするんだからね。ウヘヘ えぇと、監視カメラの録画映像は・・・」

はメンバーたちと別れてから一度家に帰り、時間を置いてからこっそりと学校に舞い戻ってきたのだ。 約束を破った罪悪感がないわけではないのだが、それにはの決意を揺るがすほどの力はなかった。

まずは「赤マント事件」が起きた時の監視カメラの録画映像チェックすることからはじめる。 入って右手に設置してある引き出しから、今月の引き戸を見つけ出し、その中から事件のあった日のビデオを取りだす。比較のために何事もなかった日のビデオも何本か一緒に。

「さてさて、鑑賞開始ですな。」

背中にしょっていたリュックの中から、まるで当たり前のようにポテトチップスとコーラを取り出し食べ始めた。コレではお家での映画鑑賞と変わらない。 しかし、ノートも取り出しているところを見ると、きちんと調査する気はあるようだ。 備え付けのビデオデッキにビデオを入れると静かな室内に、映像が映し出され始めた。
長い廊下を正面から撮るアングル。生徒でにぎわう昼間の映像はとりあえず飛ばすことにする。 画面が夜のものになり、パリパリとポテトチップスが噛み砕かれる音だけが響く。 そして、被害者の生徒が画面の奥から現れた。 ・・・まだ、変化はない。まだ・・・まだ・・やっとその生徒が廊下の中央部に差し掛かると明らかな変化が現れた。 その生徒がピタリと歩みを止め、何かにおびえるような表情をし始めたのだ。

『せっ、先生?・・・見回りですか・・・?』

は身を乗り出した。今まさにその生徒が襲われる瞬間を見ようとしているのだ。 生徒がゆっくりと後ろを振り向く。

「・・・ちょ、とぉ!」

しかし、ジジジと砂嵐が入り始めた。 そしてその砂嵐が激しくなる。このままでは襲われる瞬間が、犯人が見れなくなる。

「糞っ!!」

がんがんとはテレビを叩く。 しかし、その頑張りも虚しく、生徒が完全に後ろを振り向くと同時に画面は砂嵐に支配された。 はため息をついて油断した。 だから背後にあるドアがガチャリと開いたとき、自分でも吃驚するほど、ビデオと同じタイミングで悲鳴を上げていた。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!悪霊退散!!南無阿弥陀仏!!記念写真撮らせてぇ!!」
「・・・なにしてるんじゃ・・・?」
「・・・えっ?」

振り返るとそこにはドアノブに手をかけたままの姿の仁王が豆鉄砲でも食った鳩のような顔をして突っ立っていた。




落ち着いたは、今2度目の事件当日のビデオを仁王とジャガリコを食べながら見ている。 いわくお菓子は必須アイテムらしい。
どうやら仁王はが学校に忍び込むと踏んで自分もやってきたらしい。 で、学校の中を探って見ると案の定がいたわけだ。

「あの幸村との約束破ってよく来たなぁ〜。怒られても俺は庇わないけー覚悟しんしゃい。」
「えー一緒におこられましょうよ〜。グヘへ!同じ窮地を乗り切ったもの同士、なんかヤッホイな関係になっちゃうかもよ!」
「嬉しくなか。ホラさっさと検証検証。襲われる寸前になると画面は砂嵐になって、音声だけ聞こえるんじゃったな。」
「一本目はそーだったよ。」
「・・・まぁ、みりゃわかるじゃろ。」

2本目も、3本目も、4本目も確かに襲われる瞬間砂嵐になった。そして悲鳴だけがスピーカーから流れた。 事件以外の映像を見たがそういうことは一度もない。 しかも、砂嵐になって聞こえる悲鳴の中に、何を言っているかまでは分からないが低く唸るような声が入っているのもわかった。

「フフフ、コレは俄然幽霊説が有力になってきましたねぇ。ヤッホイ!!」
「・・・確かに、こんなことは普通じゃありえないことじゃけどなぁ。」
「まだ、納得しないんですか?」
「偶然、と考えるべきじゃなか。」
「違いますよ!!幽霊が磁場を狂わせているんです!!」

行き詰ってしまったたちはハンパにしていた現場検証を再開することにした。 今来ているのは第二の現場の裏庭。

「うぅ、いかにもって感じですね。」
「ほんとに、楽しそうじゃな・・・」
「こう、内に秘めたるものがムクムクと、鎌首をもたげるように「さっさといくぞ。」 え〜きぃてくださいよぉ」

そういって足を踏み出した瞬間、はまたあの感覚に襲われた。

やはり今いた裏庭であって、裏庭ではないところ。 そのでは数人の女子に囲まれていた。

『まじうぜぇ。』
『学校くんなよ。』
『ばかじゃねぇ?』
『死ねばいい』

それは明らかに自分を対象にした虐めだった。
怒りと、苦しみと、悲しみ。

死にたい・・・





「・・なにやってんじゃ?立ちながら寝るとかってマジ引く」
「・・・戻ってきた・・・」
「は?」

気が付いたらはしゃがみ込んでいた。 のん気な仁王の言葉を受けながらさっきの映像を必死に脳みそに刻み込む。 忘れちゃいけない。これは今回の事件の謎を解くための重要な手がかりになる。 手がかりをたどらなくては・・・

「におー君。ここで得られることはもうないはずです。第3の事件現場へ急ぎましょう。」







あとがき

仁王と接近!!